元社団法人日本学校歯科医会 専務理事 丸山進一郎
昨今、毎年春の定期健康診断時になると新聞誌面の「読者の声」の欄などで「学校の健康診断でむし歯があるというので歯科医院へ行ったら、むし歯はなかった」「学校ではむし歯がないと言われたのに、かかりつけの歯科医院に行ったらむし歯が見つかった」など、学校での歯科健康診断が不正確だと批判めいた記事をよく見かけることがあります。過去、昭和40年代、50年代の「むし歯の洪水」の時代は、むし歯の「早期発見、早期治療」が叫ばれ、学校歯科医が探針を頻繁に使用して「保健管理」を重視し、確定的な検診をしていました。しかし、昭和60年代、平成になると子どもたちのむし歯は減少し(文部科学省学校保健統計を参照ください)、児童生徒の口腔疾病状況は様変わりしてきました。そこで、学校における歯科健康診断はヘルスプロモーションの考え方から「生きる力」の育成を目指し、健康教育重視へとシフトしてきました。平成6年度の文部科学省局長通達により平成7年度から歯科における健康診断は「ふるいわけ審査(スクリーニング健康診断)」になり、かつての病理学的な審査基準のC1,C2,C3,C4,などの確定診断ではなくなりました。現在は、健康(0)、要観察(1)、要治療、要精査(2)の3段階のスクリーニング評価です。特に、平成18年度以降は世界的な潮流のもと、歯質を傷つける恐れのある探針を積極的には使用せず、主に視診で行うようになっています。
すると、一部では学校での歯科健康診断の不要論も見え隠れするようになりました。しかし、現代の学校における歯科健康診断は医療的な診断ではなく、かかりつけ歯科医の積極的な活用を勧める上で、健康教育の一環であることに位置づけられているのです。健康診断の結果は、保護者や児童生徒、学生に伝えられますが、その主旨が一般社会にいまだ伝わっていないようです。今後は、文部科学省を始め、日本学校保健会や日本学校歯科医会が更に普及啓発に努めなければいけません。
掲載日:2011-2-21