(平成21年6月発行 財団法人日本学校保健会会報「学校保健」277号別刷記事より)
早期検知・早期対応の重要性
本誌274号に新型インフルエンザの首都圏で発症者が出た場合の流行シミュレーション記事を掲載しましたが、そこで学校の休校処置+20%の外出自粛で罹患率約20%減、学校の休校処置+40%の外出自粛で約30%減という結果があります。
新聞報道によると、海外渡航歴のない国内最初の患者となった神戸市の高校生の場合、当初、A型インフルエンザという診断でした。念のために医師がとりあえず検体を送ったところ新型と判定されました。
欠席者が目立ち始めたのは5月11日です。全校生徒995人のうち32人、15日では52人の欠席があったといいます。高等学校は小学校と違い、休校処置がとりづらいともいわれていますが、感染症における流行の早期検知、早期対応の重要性は、この件で十分に立証されたのではないでしょうか。いかに少人数のうちに異常を発見するか。その情報をいかに共有して周知し、早期対応に役立てるか。今回の場合、早期に対応処置を講じておけば、新型のインフルエンザであってもなくてもこれほどまで学校は慌てなくてもよかったかもしれません。
学校での対処
では、学校はどう対処すべきでしょうか。
学校では、欠席者が「新型インフルエンザ」と診断が確定した後に対応したのではすでに遅く、また、小学校においても従来の欠席者が3割出てからの学級・学校閉鎖ではなおさらです。「発熱」「咳」での欠席者の推移を平素から把握し、そこからより早く異常に気づくことが肝心です。より早く気づくことによって、予防や保健指導に活かすことができます。
その一助となるのが本会が国立感染症研究所感染症情報センターと共同で開発した「学校欠席者情報収集システム」です。これは、学校のみならず、教育委員会、校医、自治体、保健所や医師会などの地域医療とつなげる機能を持っています。その普及は、子どもたちはもちろんのこと、地域の人々の健康に役立てられます。地域レベルから全県、地方、全国へとシステムの利用が広がれば広がるほどその効果が発揮されます。もう一つのこのシステムの特徴は、インフルエンザだけでなく、麻疹や感染性胃腸炎、あるいは食中毒などにも対応できるということです。
今回の動きがまだどうなるかわかりませんが、この冬の流行の前に準備を整えておく必要があります。このシステムにご理解いただき、各学校でのご協力とご活用をお願いします。
保健指導には
学校だけでなく、職場や家庭で予防として推奨されているのが「うがい」「手洗い」「マスクの着用」です。ほかに体の抵抗力が落ちないよう十分な睡眠や栄養摂取、日頃の健康管理も大切です。また、なぜ人混みを避けたほうがいいのか、学校が休校になっても外出は控えなければいけないのかを子どもにわかるよう指導しなくてはいけません。
もし、罹患した時は、発症から48時間以内の抗インフルエンザ薬の投与が有効だといわれています。しかし、医療にかかることは大切ですが、この先の流行次第では医療機関が正常に機能しているかどうか保障はありません。今回の流行は幸にも「強毒型」ではありませんが、そういう事態となっても慌てないために安静と水分補給を心がけるよう指導しておきましょう。