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定期健康診断のお知らせを活用する

定期健康診断のお知らせを活用する

(会報「学校保健」288号 H23年5月発行号より)

(社)日本学校歯科医会 常務理事
赤井 淳二

 

確定診断からスクリー二ングへ
─教育的観点から─

 4月の桜の開花とともに春の歯科定期健康診断が始まっています。平成22年の文部科学省が発表した学校保健統計によると12歳の一人当たり平均むし歯数DMFTは1.29本であり、減少傾向は著しいものがあり、この数字は学校における歯科保健活動の成果ともいえるものですが、一方歯肉炎の増加や低年齢化、さらには摂食・嚥下などの機能面での問題が顕在化してきました。

 平成7年に学校保健法施行細則の一部改正を受けて健康診断に対する考え方も随分様変わりしてきました。以前はなるべく早く病気を見つけ、早く治すといった早期発見・早期治療を目的とする確定診断(以前はむし歯をC1, C2, C3, C4といって進行度により分類していました)をしていましたが、現在では定期健康診断の結果を子どもたち一人ひとりが、自分の歯や口の状態を把握することにより、これをいかに健康行動に結びつけるのかといった教育的観点がクローズアップしてきました。こういった背景からスクリーニング(ふるいわけ)という手法が導入されました。健康状態を「健康」「要観察」「要治療・要精密検査」の3つのグループに分け、それぞれのグループで適切な事後処置を行うことで子どもたちの“自律”を促すことが目的です。「健康」のグループは何故自分が健康でいるかという問題を考えさせ、正しいブラッシングや規則正しい生活習慣が健康に結びついていることを理解させ、「要観察」のグループは病気になりかけの状態があるわけですから、これを健康側に引き戻すような保健指導が必要になってきます。「要治療・要精密検査」のグループは、できるだけ早くかかりつけの歯科医への受診を勧めるとともに、学校では主に養護教諭を中心に学校歯科医とも連携して、個別のきめの細かい保健指導や生活習慣の見直しを行うなどの保健教育を進めることが大切です。

家庭での正しい生活習慣
子どもの健康行動へつなげる

 定期健康診断の結果を以前は治療が必要な子どもたちに対してだけ「治療勧告書」としてお知らせしていましたが、現在では「定期健康診断結果のお知らせ」としてすべての子どもたちの手元に届くようになりました。したがって、病気を持つ子どもたちだけでなく、すべての子どもたちが自分の健康を自分自身で守ることのできるようにこのお知らせを有効活用することが重要です。保護者にもこのことは周知させることが必要ですし、家庭でのブラッシングや規則正しい生活習慣を身につける上での材料として利用できたらすばらしいことだと思います。むし歯や歯肉炎を持っている子どもを叱るのではなく、何故そうなってしまったのかを理解させ、自分自身で歯科医院に行くという健康行動に結びつけることがねらいなのです。そして、健康である子どもには上手に褒めてあげたりして、自己達成を感じることで、さらに健康に関心を持ってくれることを期待しています。 

掲載日時:2012/01/23