薬剤耐性菌について
国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
具 芳明
抗菌薬(抗生物質、抗生剤とも言います)は細菌による感染症の治療に用いられ、現代の医療に欠かせない大切な薬です。今から90年前に発見されたペニシリンをはじめ多くの抗菌薬が開発されてきました。しかし世界中で、抗菌薬の効きにくい「薬剤耐性菌」が抗菌薬の開発をはるかに上回る勢いで増えており、大きな問題となっています。このままでは抗菌薬が効かなくなってしまい、感染症を治せない時代に戻りかねません。
薬剤耐性菌の問題は、抗菌薬の不適切な使用が原因のひとつといわれています。日本で国民を対象に行われたインターネット調査では、「抗生物質はウイルスをやっつける」「風邪やインフルエンザに抗生物質は効果的だ」というのを間違いだ、と正解した人は全体の1/4に及びませんでした。同じ調査では、抗菌薬や薬剤耐性菌の情報を得る機会があった人の約60%が「考え方が変わった」と答えています。薬剤耐性の問題に取り組むためには、感染症や抗菌薬の正しい知識が必要であり、知識を得る機会を作っていくことも大切です。
AMR臨床リファレンスセンターは、抗菌薬や薬剤耐性菌についての情報を広く提供し、抗菌薬を大切に使っていくための活動を行っています。児童や生徒に正しい知識を得てもらうことは将来の薬剤耐性対策につながります。そこで今回、授業で使える教材を作成しました。スライド資料、動画、リーフレットを組み合わせた教材です。感染症や抗菌薬について、さらに薬剤耐性菌について学ぶことができます。対象は小学校高学年以上で、手洗いなどの実習と組み合わせるとさらに効果的です。
教材はAMR臨床リファレンスセンターの啓発サイト(http://amr.ncgm.go.jp/materials/)で内容を確認できます。
さらに、AMR臨床リファレンスセンターが運営している登録制のeラーニングサイト(https://amrlearning.ncgm.go.jp)ではスライドの説明を読んだり、各種ファイルをダウンロードできます。
感染症について学び、抗菌薬を次世代にも残していくため、ぜひご活用ください。