第11回「保健室で知っておくべき精神保健の基礎知識」
 

 子どもたちの健康を考える上で、発達障害、精神障害に関する知識は必要不可欠になっています。今回の特集では精神保健をテーマに東京慈恵会医科大学精神医学講座の小野和哉先生に子どもの発達障害、精神障害に関する保健室で知っておくべき基礎知識についてお聞きしました。

(聞き手・文作成/公益財団法人日本学校保健会事務局)

インタビュー:東京慈恵会医科大学 精神医学講座
専任講師 小野 和哉 先生

 

1.発達障害

――まず、発達障害に関することからお聞きしたいのですが。

――私たちには問題行動を起こす子どもが発達障害かどうかということは判断できないのですが、なにかアドバイスはありますでしょうか。


1.発達障害

 

Q.まず、発達障害に関することからお聞きしたいのですが。

A. 発達障害とは、一般的に乳児期から幼児期にかけて様々な原因が影響し、発達の「遅れ」や質的な「歪み」、機能獲得の困難さが生じる心身の障害を指す概念のことをいいます。WHOによる国際疾病分類ICD‐10では、「F80-F89 心理的発達の障害」、「F90-F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害」が相当し、米国精神医学会によるDSM-IVTRでは、「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」が相当します。
 発達障害のある人は一般人口の5〜6%と推定されているのですが、これまでの学校の就学時健診などでは、知的障害の有無で通常学級に通うかどうか判別されていますので、発達障害があっても知的な障害のない子どもは通常学級に通っており、計算上では一クラスに2,3人はいることになります。

 発達障害の代表的なものには、

 ○精神発達遅滞 (知恵遅れ、知的障害)
 ○広汎性発達障害 (自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害など)
 ○特異的発達障害 (学習障害〈LD〉、運動能力障害)
 ○注意欠陥・多動性障害(ADHD)

 があげられますが、自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害は、今後、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」という呼称に統一されることになっています。

Q. 私たちには問題行動を起こす子どもが発達障害かどうかということは判断できないのですが、なにかアドバイスはありますでしょうか。

A. 問題行動が発達的問題に起因するものは、その子どもにとって行為の意味や行為の結果に対する認識のないことが多いと思われます。ASDの事例では、人のものを盗んでも、それが欲しかったという理由で、罪悪感も全く持たないような場合があります。また、多動の場合の発達障害かどうかという判断にしても専門医でないと難しいものがありますので、一概には言えません。
 学校では、その子どもの行動が学校で適応できる範囲かどうか、逸脱度が大きく、困難を認識されるのであれば、担任や養護教諭の先生が抱え込まず、教育相談センターや精神保健福祉センターなどの専門機関にご相談されたほうがいいでしょう。