第4回「子どもたちの眼の健康」

 

その他(1)「オートレフラクトメーター」「プール後の洗顔」

深 山 小学1年生に「オートレフラクトメーター」という機械を使った屈折検査を全員に行っている地区がありますが、これは必要な検査なのでしょうか。

宇津見 学校保健安全法や日本学校保健会の児童生徒の健康診断マニュアルにはオートレフラクトメーターによる検査法は定められていません。学校としては作業が増えて大変ですが、ただ、先に述べたように簡単な検査では判らない遠視などの屈折異常や、左右の度に差がある不同視などを見つけてくれる検査法です。眼科医としては、実施してくれるだけでありがたい。実際に弱視が見つかったということが多数あります。

出 川 私の市ではステレオテストというのを行っていますが。

宇津見 両眼視機能の、それはよいですね。

深 山 健診で、ですかそれは。

出 川 そうです。小学校1年生対象に養護教諭が実施しています。

宇津見 よいのです、それで。眼科学校医の裁量で持って、学校長の許可があれば。ステレオテストはよいですね。視力がよくても両眼視機能がない人もいますので。両眼視機能が、完成するのは6歳くらいですが、だいたい3歳くらいでほとんど決まってきます。だから早く見つけてあげないと立体視がつかない子もいます。成長して斜視になる子がいますが、潜在的に立体視ができていたのだけれど、屈折異常が後天的に出てきて、それを矯正するだけでまた立体視が回復する子どももいます。視力が良くてもステレオテストをして、立体視が悪い場合があります。眼科へ行くと、視力検査だけでなく、調節麻痺剤を使います。毛様体を麻痺させる薬です。それにより適切なメガネを処方できます。それにより立体視が良くなる場合も少なくありません。遠視の子どもは通常眼の中が緊張しています。近くを見るときはもっと緊張するわけですから、かなり疲れます。そういう子どもは本など読んでいてもすぐにやめてしまいがちで、それを根気がないと言われてしまう。適切なメガネにより、近くも根気よく見られるようになります。

 

深 山 プール使用後の安全な眼の洗浄方法について詳しく聞きたいのですが。

宇津見 平成20年2月に「洗眼:プール後の水道水は逆効果、感染しやすく」との報道がされ、プール後の洗眼について論議がありました。水道水に含まれる塩素により角結膜上皮が障害されるとの報告ですけれど、その報告は50秒間洗眼後の結果であって、実際のプールでの洗眼は数秒程度ですので実際的ではない報告です。実際に10秒程度では障害はでません。問題は、プール後の洗眼によって、角膜に涙を載せるムチンという物質がとれて角結膜上皮障害が起きやすくなります。それでどうしても洗いたいのならば、1〜2秒ならよいというコンセンサスはあります。でも、基本的には目を洗うときには人工涙液をお勧めします。
 平成20年10月に日本眼科医会は「プールにはゴーグル使用が望ましい。またプール後の水道水による簡単な洗眼は行って良いが、積極的に推奨するものではない。なお児童生徒の体質によっては、学校医の指導のもと、プール後に防腐剤無添加の人工涙液の点眼や、簡単に水道水で目のまわりを洗うなどの対応も必要である。」という見解を示しました。又、プールの水が清潔かというとこれが疑問です。プールの塩素濃度は不安定であり、蒸発して消毒効果は低下します。屋外ではさらに汚染されやすく、おしりについた便にも微生物がいるために、プール後に洗浄することを否定することはできません。2〜3秒でさっと水道水で洗うことは否定できません。このように洗眼については、いろいろと物議を醸していますが、結局、外傷でもそうですが、眼の中に異物が入ったら、眼を圧迫しないようにしてすぐに洗う、というのは常識なのです。でも、今、家庭であまり教えないですよね。それは人工涙液のほうがよいとのことです。硫酸などの劇物や中性洗剤が入ったという場合は、眼科では2000cc〜4000ccくらいの流水で洗っています。