第4回「子どもたちの眼の健康」

 

その他(3)「二重まぶたの形成、まつ毛のエクステンション」

 

上 原 二重まぶた形成化化粧品やつけまつ毛などの眼の周りの化粧品の害や留意点についてはいかがでしょうか。

宇津見 二重まぶたにする化粧品(接着剤)にて涙点閉塞が生じることやまつ毛のエクステンションで角膜や結膜の炎症やまつ毛が抜けている例が多くあります。
 エクステンションは自分のまつ毛に人工のまつ毛を接着剤でつけ、約1ヵ月の間隔でリムーバーで接着剤を除去して、新しい人工のまつ毛を付けるものです。接着剤やリムーバーが直接眼表面に入ることや、揮発性のために入っていないと思ってもしみ出して眼表面に入ります。眼表面に入ることで、角結膜障害を生じることが少なくありません。リムーバーの注意書きには、マニュキュアなどの色が変化する場合もあると記載されてあります。
 エクステンションをするには美容師の免許が必要ですが、無資格者が施行している場合がありますので、保健所などにご相談ください。
 エクステンションは費用がかかるので子どもたちでは、つけまつ毛をしている場合は少なくありません。つけまつ毛はまぶたの縁につける時に眼に触れる可能性があることや接着剤が眼に入ることがあります。また、化粧品が眼の中に入っている場合は少なくありません、当然、眼の表面によいはずはありません。特にCLを使用している子どもたちには注意が必要です。化粧品には人工の脂質成分が含まれているためにCLにつき汚れます。CL使用者がお休みなどでお化粧をする場合は、よく手を洗ってからCLを入れ、お化粧してください。CLをはずす時は手を洗ってからCLをはずして、お化粧を落としてください。学校にはお化粧をしてきてはいけないというモラルがありますが、それを守らない場合も少なくないと思いますので、指導をお願いします。
 私の患者さんで二重まぶたにする化粧品、エクステンションでトラブルを生じた患者さんを紹介しますので、参考としてください。

[症例1]15歳 女子、中学生

診断名:左眼上下涙点閉塞

主訴:左眼の流涙

現病歴:平成16年12月頃より、二重まぶたにする化粧品(商品名アイプチ)を付けていた。平成17年10月頃より、左眼の涙が止まらないために平成17年12月19日に宇津見眼科医院(以下当科)を初診した。

臨床所見:左眼上と下の涙点が完全に閉塞していた。

治療:涙点をブジーで拡げて涙点から水を通すことにより鼻涙管の通水を確認した。抗菌とステロイドの点眼、ステロイドの眼軟膏を処方した。

経過:その後、上下の涙点はふたたび閉塞するために、涙点ブジー法にて両涙点を拡張する療法を1週間間隔で施行し、平成18年2月3日に治癒した。今後、同化粧品は使用しないように指示した。

 

[症例2]29歳 女性、主婦(韓国人)

診断名:両眼角膜ビラン

主訴:両眼眼痛

現病歴:平成20年5月7日に東京都新大久保のエステサロンにてまつ毛エクステンションを施行(美容師ではない)した。その後、両眼の眼痛が生じて治らないために平成20年5月14日当科初診した。

臨床所見:矯正視力は右0.3、左0.2と低下し、両眼角膜中央と下方部分に角膜ビランを認めた。平成20年6月23日治癒した。今後、まつ毛エクステンションを中止するように指示した。

治療:抗菌点眼・眼軟膏処方

 

[症例3]41歳 女子 事務職

診断名:右眼表層角膜炎

主訴:右眼異物感

現病歴:平成23年7月21日まつ毛エクステンションを美容師に施行してもらったが、その直後より右眼違和感があるために付けまつ毛を取ってもらったが、右眼の異物感と充血があるために、同年7月22日に初診した。

臨床所見は右眼角膜上方に表層角膜炎を認める。

治療:初診時、抗菌点眼薬と眼軟膏を処方した。

経過:初診時のみの来院で、再診していない。

診断根拠:エクステンションによりまつ毛の方向によっては角結膜上皮に影響を与える可能性がある。また、エクステンションによる接着剤やまつ毛を取るリムーバーの液が眼表面に入る可能性がある。患者さんの表層角膜炎はリムーバーなどの液による角膜への影響が考えられた。