回答者:東京都立小児総合医療センター
院長 本田 雅敬 先生
〔目次〕
- 1.腎臓検診について
- Q.腎臓検診の事前準備で学校や保護者が心がけないといけないところはどんなところでしょうか。
- 2.学校検尿について
- Q.学校検尿の意義について教えてください。
- Q.中学校ですが、起床時の尿がとれなくて、その後の尿を提出してくる生徒がいます。「蛋白尿がでる可能性が高くなる」という理解でいいのでしょうか。
- Q.微少血尿で特に感じることです。兄弟で判定される例が結構あるように思いますが、遺伝するものですか?
- 3.その他
- Q.先天的な腎臓疾患がなくても、成長の段階で発症する腎臓疾患にはどういうものがありますか。また、学校などで腎臓疾患が判明した子どもの予後について、注意点等を教えてください。
- Q.腎臓疾患の重篤な子どもに今まで接したことがないのですが、運動制限の他に食事制限が必要になることがあると聞いたことがあります。具体的に、給食等で対応するとしたらどのような配慮が必要になるでしょうか。
- Q.学校検尿のシステムについて教えてください。
1.腎臓検診について
Q 腎臓検診の事前準備で学校や保護者が心がけないといけないところはどんなところでしょうか。
A. 学校の腎臓検診で留意すべき点は大きく三つあります。一つは早朝第一尿の採取です。特に思春期の頃の子どもは、体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)が出やすいので、起きた直後でないと尿中に蛋白が混じりやすくなります。体位性蛋白尿とは、安静に横になっている時や、寝ている時は蛋白尿は出ませんが、立っている時や、体位の変化が重なることによって尿中に蛋白がみられるようになります。体位性蛋白尿自体は治療の必要はなく、多くの場合は思春期を過ぎる頃には自然に消失します。体位性蛋白尿を否定するために早朝第一尿を採取します。ただ、早朝第一尿でも前夜に運動をしたり、就寝前にトイレに行かないままであったりすると、蛋白が出ることがありますので、採尿の前日は夕食後の運動を避け、就寝前には必ずトイレに行き、朝は活動する前にトイレで尿を取ってください。
二つ目は女子の月経による潜血の陽性反応です。月経時は検尿をしないことが原則ですが、学校検尿はスケジュールが前もって決められていますので、全体の検尿日をずらすことが理想ですが、できない場合、学校側の配慮としては、1回目の検尿が生理日にあたっている児童生徒には、2回目の検尿を1カ月後に設定せず、それではまた生理日にあたってしまう可能性が高いので、その場合は1回目検尿で陽性の場合は1週間〜2週間後に検尿するような扱いにしてもらいたいと思います。
三つ目は、検尿前のビタミンC摂取による潜血の偽陰性反応です。前の晩にビタミンCが多く含まれている野菜や果物を多く摂ったり、サプリメントなどを摂ると、潜血反応が陰性を示し正しい判定ができません。ビタミンCは、かぜ薬にも多く含まれているものもあります。また、意外に知られていませんが、ペットボトルなどほとんどの清涼飲料水には酸化防止剤としてビタミンC(またはアスコルビン酸と記載)が含まれています。現在の検査法は感度がよくなり、アスコルビン酸に反応しにくくなっていますが、多量に摂取することは避け、かぜ薬も服用する前に成分表をよく確認するなど注意が必要です。