回答者:埼玉医科大学国際医療センター
小児心臓科 教授 住友 直方 先生
〔目次〕
- 1.心臓検診について
- Q.心臓検診の事前準備で学校や保護者が心がけないといけないところはどんなところでしょうか。
- 2.心電図検査について
- Q.学校での心電図検査の意義について教えてください。
- Q.心電図検査において12誘導と省略4誘導の違いについて教えてください。特に、省略4誘導でわからないことはあるのでしょうか。
- Q.学校の心電図検診で異常と判断された場合、どのような不整脈の種類があって、それぞれどう対処すればいいでしょうか。
- 3.その他
- Q.先天的な心臓疾患がなくても、成長の段階で発症する心臓疾患にはどういうものがありますか。
- Q.先天性心疾患のある子どもと後天性心疾患のある子どもの心臓突然死の割合を教えてください。
- Q.学校等で心臓疾患が判明した子どもの予後について、注意点等を教えてください。
- Q.心臓検診時、古い校舎で床がきしむことがあります。そのような雑音は検査結果にどの程度影響してしまうのでしょう。
- Q.時々心臓が痛いといって保健室に来室する生徒がいますが、既往歴や全身状態等確認して安静にすると良くなって戻っていくことがあります。心臓検診等や内科健診でも問題はなく「心臓が痛い」というのは心臓に原因があることは少ないと聞くのですが、どのような原因が考えられるのでしょうか?
1.心臓検診について
Q 心臓検診の事前準備で学校や保護者が心がけないといけないところはどんなところでしょうか。
A.(1)学校心臓検診の目的
学校心臓検診は、昭和48年の学校保健法施行規則の改正により、定期健康診断として実施が義務付けられましたが、各地域で方法が統一されておらず、心電図検査を行う学年などもまちまちでした。平成6年12月の改正から小学校1年生、中学校1年生、高等学校1年生全員に心電図検査が義務付けられました。
学校心臓検診は実施する目的としては、次の4つがあげられます。
- <1> 疾患を正しく診断し、それに応じた正しい管理指導区分を定め、適切な管理指導を行って疾病の悪化を防ぎ、さらには突然死を防止する。
- <2> 心臓検診により医療や経過観察を必要とする症例を発見し、適切に治療や経過観察を受けるよう指導する。また既知の疾患でも主治医や専門医の管理指導を受けていない場合には検診をすすめるように指導する。
- <3> 正しい指導区分を定め、過度の運動制限や無用な生活制限を解除する。
- <4> 以上の目的、目標を実現するために、必要に応じて専門医の意見を聞いたり、紹介をする。
(2)学校心臓検診システム
学校心臓検診のシステムとしては、心臓検診調査票や学校医診察、心電図(心音図)等を行う1次検診、専門医診察や精密検査などの2次以降の検診を経て、生活管理指導や経過観察を行っていくことになります。
それぞれの検診で重要なことについては次の通りです。
- 〈1次検診〉
- <1> 疾患を可能な限りもれなく発見する
- <2> 心疾患のあることがすでに分かっている児童生徒には、心臓病調査票などを通じて適正に管理されているか確認する。
- 〈2次以降の検診〉
- <1> 心疾患を正しく診断する
- <2> 重症度を決定し、適切な指導区分を決める。指導区分を正しく実行させる。
- <3> 必要に応じて経過観察を行う。
- <4> 突然死またはその可能性のある疾患を早期に発見し、その予防対策を講じる。
(3)事前準備
学校の心臓検診での事前準備として一番大切なことは、心臓検診調査票の提出です。学校の健康診断では、ほかにも保健調査票や結核問診票(平成24年4月から保健調査票へ統合が可能)など保護者や本人に記入していただく調査票がありますが、心臓検診調査票は学校医診察、心電図検査とともに、この調査票により2次以後の検診への抽出を決めることがあり、とても重要です。特に突然死、失神の既往、動悸、めまいなどが起こったことがあるかどうかはとても大事な情報ですので、確実に記入し、提出するようにしてください。