学校での心臓検診・腎臓検診

3.その他

Q.先天的な心臓疾患がなくても、成長の段階で発症する心臓疾患にはどういうものがありますか。

A. 成長の段階で発症する心疾患には、肥大型、拡張型、拘束型などの心筋症、原発性肺高血圧症、リウマチ熱、川崎病などがあります。また、先天性でも冠動脈奇形では、乳幼児期に症状が出現しないため、ある年齢まで疾患が発見されないことがあります。QT延長症候群も心電図を記録して初めて発見されることがあります。Brugada症候群などは、幼児期には心電図がはっきりせず、高校生頃になって初めてはっきりすることもあります。10歳くらいまでは症状を認めず、そのころから運動時の失神で発見されることが多い疾患としてカテコラミン誘発多形性心室頻拍があります。

徴候としては、原発性肺高血圧や心筋症で心不全症状(階段を上ると息切れががする等)、失神などで発見されることがあります。先天性冠動脈奇形では、胸痛や失神で発見されることがあります。Brugada症候群では失神、動悸などを起こすことがあります。カテコラミン誘発多形性心室頻拍も運動時の失神で発見されることが多いと言われています。

Q.先天性心疾患のある子どもと後天性心疾患のある子どもの心臓突然死の割合を教えてください。

A. 日本体育・学校健康センター(現・独立行政法人日本スポーツ振興センター)の資料によると、1983年〜1991年(1987年度を除く)の学校管理下における突然死902例のうち診断名の記載のあるのは824例、そのうち心臓性突然死は688例(83.5%)でした(下表)。この頃は毎年、100例程度の心臓性突然死があり、先天性心疾患は131例で19%を占めていました。現在、学校では、心電図検診の義務化やAEDの普及により、突然死の数は劇的に減少し、2006年以降の心臓性突然死は30例以下となっています。しかし、先天性心疾患の突然死の割合はそれほど変わっていません。

器官別 診断 例数
心疾患 83.5 急性心不全 389
先天性心疾患 131
不整脈 58
川崎病 16
原発性肺高血圧 2
肥大型心筋症 73
拡張型心筋症 5
心筋炎 3
虚血性心疾患 11
乳幼児突然死症候群(SIDS) 2.7   22
中枢神経疾患 9.2 頭蓋内出血、脳梗塞 67
脳症、脳炎 4
てんかん 3
脳性まひ 2
呼吸器疾患 1.2 ぜん息 13
急性呼吸不全 6
肺炎、気管支炎 4
溺死 0.8   7
その他 1.0   8
合計     824

 

Q.学校等で心臓疾患が判明した子どもの予後について、注意点等を教えてください。

A. 心疾患はそれぞれ予後が全く異なります。それぞれの疾患の管理基準や投薬などをきちんと守ることが重要です。危険な不整脈のある子どもの場合は、教職員や保護者が心肺蘇生法、AEDの使用方法を学び、万一の場合に備えておくことが大事です。疾患によっては、家庭にAEDを設置することも必要です。

現在、ほとんどの学校にAEDが設置されています。前述したようにAEDの普及により心臓性突然死は劇的に減少しています。心疾患のある子どもばかりでなく、スポーツや運動、事故等で心停止することもありますので、心肺蘇生法、AEDの使用方法は教職員ばかりでなく、高学年の生徒や一般の方々も覚えておいて欲しいと思います。

Q.心臓検診時、古い校舎で床がきしむことがあります。そのような雑音は検査結果にどの程度影響してしまうのでしょう。

A. 床の雑音は聴診器での聴診にはほとんど問題になりません。また電気的な影響は少ないので心電図の記録にも影響はありません。むしろ、蛍光灯点灯、冷蔵庫などの家電製品に伴う電磁波が心電図記録に影響することがありますので、検診時には注意が必要です。

Q.時々心臓が痛いといって保健室に来室する生徒がいますが、既往歴や全身状態等確認して安静にすると良くなって戻っていくことがあります。心臓検診等や内科健診でも問題はなく「心臓が痛い」というのは心臓に原因があることは少ないと聞くのですが、どのような原因が考えられるのでしょうか?

A. 実際には心臓神経症という心の病気と考えられるものが多いと言われています。しかし、気胸や虚血性心疾患(冠動脈異常)などを否定することが大事です。これらの場合にはかなり強い胸痛や呼吸困難が伴います。また、児童のなかには不整脈を胸痛と表現する子どもがいます。これ以外には、逆流性食道炎や心筋炎、胸膜炎、肋間神経痛などが原因として挙げられます。児童が胸痛を訴えた場合には、一度は病院で検査を受けて原因を調べてもらってください。