- 関市心肺蘇生・AED 学校教育プロジェクト
- 関市教育委員会 学校教育課
2.事業の概要 (1)ねらい
(2)講習を充実したものにするために
講習会の前には、各中学校で担当する教師を対象にして事前の研修会を開催します。関市では、各学校に1名程度応急手当普及員の資格をもった教員がおり、この教員を中心にして研修会が開催されています。
また、教育委員会では、どの中学校においても本事業のねらいが達成されるように、実施マニュアルを作成し、全学校に配布しました。実施マニュアルを作成するにあたっては、単に技能の伝達のみに終わらないように、自分の命の大切さや人の命の重み等を考える機会となるよう、講習の中に、日々命を救う現場で働いている人(救命救急隊員や救命救急センターで働く医師など)が語る時間を設けました。
(3)各機関との連携
この事業は、岐阜県内の医療関係者らが設立したNPO 法人「岐阜救急災害医療研究開発機構」や地元消防組合の救急隊員の方々にご協力いただいています。命を救う現場で日々活躍している救急救命隊員の方に参加していただくことで、生徒たちが救急救命に関心をもつことができるようにしました。
(4)学んだことをさらに確かなものに、そして地域に広がるように
心肺蘇生法の授業終了後、キットを家庭に持ち帰り自分の身近な人2人以上に伝達することを課題として与えています。学んだことが確かなものになるだけでなく、家族と向き合う良い機会になることを願い、ひいては「いのちの輪」が地域に広がることを期待しています。
3.実践の様子
講習会は、運動会のリレーで走った後に、突然心肺停止をして亡くなった女子生徒の実例をもとに、家族や友達、大切な人が万が一の状況に陥った時に、心肺蘇生法を身に付けていることが命をつなぐことになるという内容のDVDを見ることからスタートしました。これにより、子どもたちは、講習の課題を受け止め、静かな中にも緊張した雰囲気が醸し出されます。
キットを活用した実技講習では、付属のDVDの映像をスクリーンに映し、キットの使用方法から心肺蘇生法、AEDの使用方法までを見ながら実習しました。教師、支援のインストラクターに見守られ、生徒たちは額に汗をにじませながら一生懸命に実習に取り組みました。
〈授業後の生徒の感想〉
講習を受ける前は人の口に自分の口をつけてまでやるのは、ちょっといやだなあと思っていました。でも講習を受けてから、心肺蘇生やAED をやることによって1人、または、2人、3人と大切な命が助かっていくことを知り、命を助けるのに恥ずかしさなんていらないと思うようになりました。「命」というものがどれほど大切なもので、また、自分が今までどれほど大切にされていたかよくわかりました。これから、そういう場面に出会ったら、すぐに心肺蘇生をして命を救える人になりたいと思いました。将来につながる大事な授業が受けられてよかったです。 女子生徒より
〈家庭にキットを持ち帰った生徒から講習を受けた保護者の感想〉 胸骨圧迫は、思ったより力が要りました。でも、子どもと同じように私も、助けようという気持ちでがんばりました。人工呼吸も、うまく胸が上がったときはとてもうれしくて、ちゃんと手順を覚えて忘れないようにしたいと思いました。先に覚えた息子が私に教えてくれる姿は、とても頼もしく思えました。 男子生徒の母親より
4.おわりに 一人ひとりの命の尊さや人を救うことを学ぶ取組は、子どもたちにとって大きな経験となります。心肺蘇生法の講習を受けた後の子どもたちからは、「命を大切にしたい」「相手を大切にしたい」「自分を大切にしたい」、さらにはこの学習を通して「思いやりの心を大切にしていきたい」、「いじめ根絶を目指したい」等、多くの感想が寄せられました。
「家に帰って、2人以上の人に教える」という課題に対しても、ほとんどの生徒が家庭で取り組むことができ、多くの生徒が3人4人に教える等、積極的な姿が見られました。
保護者の感想の中には、子どもたちが真剣に教えてくれたこと、子どもたちが家族と向き合う良い機会になったこと等、感謝の思いがつづられたものが多くあります。
子どもたちがつなげる「いのちの輪」がどんどん広がり、救急救命に関心を持ち、自ら実践できる子どもたちが育ち、思いやりの心で助け合える市民となることを願っています。
(文責 関市教育委員会学校教育課 松田 和千)