第21回「冬の保健指導」

■保健指導の時間の確保

 例えば、本校は9月、1月に実施される身体計測の際に、短時間での保健指導をしてから計測を行うというような流れで時間をいただいたりしています。他の教職員への声かけも含めて、指導時間の確保や機会を工夫されているようなことがあればお伺いしたいのですが。

熊木 基本的に保健指導の時間を確保するというのはなかなか難しいですね。例えば、歯のブラッシング指導などは年に1回、優先的に年間計画の中に組み込んでいただいて確保していますが、こまめな保健指導を行うために計測の時間を利用することも難しくて。実際には、生徒が保健室に来室した際の個別指導がメインになっているというのが現状です。

池田 まとまった時間というのはなかなか取りにくいので、例えば全校集会のメインのあとに私の方から話しをしたり、お昼の時間などに、保健委員長に保健指導の内容を放送してもらったり、何回かそのシーズンになるとやるようにしています。

岡本 中学校も保健指導の時間を急に設定するのはなかなか難しいです。そのため年度当初からこの時期にはこの保健指導をと計画的に入れておきます。前任校ではこの時期に1年生で「かぜをひかない元気な体をつくろう」という保健指導の時間を2時間設定していました。1時間は私が、「手洗い・うがい、寒さに負けない栄養素、睡眠、保温、心の健康など」について指導し、次の時間には担任の指導によりまとめのワークを子どもたちにさせました。やはり自分の健康について考える特別な時間を設けることはとても大事だと思います。

 教科担任制の学校では、その時間を割いてというのは、なかなか難しいのですね。年度当初からの計画が重要ですね。吉井先生はいかがですか。

吉井 6月と11月のピカピカ月間には、希望するクラスへ養護教諭が出向き、歯科保健指導を行います。終業式の全体指導で、「手あらいのうた」を大画面に映したり、お昼の時間に校医の先生のビデオレターを放映したこともあります。本校では児童生徒が保健室に来るのを待つのではなく、保健室を出て働きかけることが多いので、その都度、その場で一人一人に指導ができます。毎月、体重測定をしていますので、その機会に保健指導をすることもできます。学校全体で健康面を第一に日々の教育活動を行っていますので、そういう面ではほかの学校よりもやりやすいと思います。

石村 本校もなかなか保健指導の時間というのは取りづらいのですが、1年生に関しては毎年、手洗いチェッカーという黒い箱で中にブラックライトが灯る装置を使い保健指導を行っています。千葉市では保健指導主任会に6台ぐらいの台数がありまして、それを毎年借りています。専用のローションをつけて、1年生が手を洗い、手洗いチェッカーの中に手を入れて、洗い残しの部分を光らせるということをやっているのですけれども、手が光るということで、子どもたちはすごく興味津々に参加してくれます。担任の先生も養護教諭と一緒になって手の洗い方はこうだね、ああだねと言いながら指導しています。ただ、ローションを使うので、様々な子どもたちがいる中で、保護者の同意をまず得なくてはいけないというのがあります。そのため、事前に指導内容のお知らせを保護者に配付しています。手洗い指導を行ったあとは、子どもたちはすごく一生懸命手を洗っています。先ほども出た「あわあわ手あらいのうた」は幼稚園の頃から知っていて、それを復習のような形で1年生でもう1回やっているような感じです。

 手洗いは一番基本になるところなのでくり返し指導していきたいですね。
保健指導をする中で、私から伝えるよりも子ども同士での伝え合いがとても影響力が大きいということも感じます。先ほど、保健委員からのお昼の放送のお話がありましたけれども、ほかにも保健委員会を活用して効果的だった活動などがありましたら教えていただけますか。

池田 県立高校は私服の高校が多いのですが、冬はとても寒いのに高校時代にしかできないと言って制服っぽい格好をしてきている生徒がいます。スカートをはいて素足にハイソックスで。そんな恰好をしながらお腹が痛いとか言ってきますので、それはおかしいでしょうという話をしますが,おしゃれ優先で、どうしたものかと思っていました。保健だよりに体調が悪いのにその服装はおかしくないか、気温に合わせた服装ができるようにならなければいけないんじゃないですかというような内容を書きました。そうすると保護者の方から「親も言っているのだけれど、ちっとも子どもが言うことを聞かないんです。私もそう思います。」という反応をいただいたりしました。保健委員の生徒とこのことについて話し合いをしたところ、ウォーム・ビズと書いてポスター貼るということになり、ポスターを生徒が作って校内に掲示しました。そんなことをしているうちにだんだんスカートだけどタイツを穿くとか、ジーパンを穿いてくるということができるようになりました。その変化を感じたのに2、3年かかったような気がします。教員側だけから指導するのでなくて生徒たちが活動していく、高校生の目線で高校生に訴えるというようなことも有効だと思います。生徒の視線を大事にするということ、保健委員会とかを使っていくというのも大事だと思います。

石村 本校では11月から3月は衛生検査を保健委員会の子どもたちが行っています。朝読書と朝の会のちょうど隙間の5分ぐらいの時間に保健委員会の子どもが各教室に行き、ハンカチとティッシュ、マスクを持っているかというのを調べています。手を洗ったあとにハンカチがないと手を洗うのをやめてしまう子どももいるので、ハンカチはランドセルにいれたままにせず、常に身につけるということを委員会の子どもたちが全校に呼びかけています。

岡本 本校では体調不良を訴えて来室する子どもの中に睡眠不足が原因の場合が多いと感じます。10月末に文化祭があり、そこで保健委員会が本校生徒の睡眠の実態についてアンケート調査をした結果を報告しました。それによると、約80%の生徒が睡眠不足を感じ、約60%の生徒が午前中ぼんやりして集中できないという実態が明らかになりました。そのことについて学校医から「睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌にも影響し、傷の治りが悪くなり、免疫力も低下して、体の抵抗力が落ちてくる。」というアドバイスをいただきました。それらをまとめて発表しました。このような生活習慣に関することも冬の健康にはとても大事だと思いますので、保健だよりや保健指導につなげていきたいと思います。