第6回「アレルギー疾患の対応と学校生活管理指導表」

学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の取り扱いと活用

並木ほかに何かどうでしょう。管理指導表を活用してうまくいったケースなど、フリートークで結構ですからお話いただければと思います。

井上このガイドラインが出たことで、養護教諭の意識がとても変わったと思います。保健調査票だけで把握していると、食物アレルギーではないケース、つまり食べられるのに食べないなどの事例があった時に、本当はどうなのかということが把握できなかったと思いますが、「管理指導表」ができて、きちんと受診して本当にアレルギーなのかどうかということが確認できるようになったことは大きなことだと思います。ただ私たちが気をつけなければいけないことは、「管理指導表」だけ出してもらっても何の意味もないということですね。管理指導表には「学校との相談を希望します」という欄があります。この「保護者と相談し決定」に丸がついたときには、学校側がどのように保護者と連携を取っていくかということが重要です。高校生は自分で管理できると思いますが、小学生には無理ですし、例えば遠足のおやつでも、食べてはいけないとわかっていてもみんなが食べていたら食べたくなってしまいます。周りが管理してあげなくてはいけない場面がたくさんあります。食べられないものがあるからと給食の時間が苦手にならないよう配慮したり、お弁当を持ってきていることに対して周りの子どもたちが理解不足から不満を言うことがないようにしたりということも含めて、学校の中で支援プランを立てていくということが大切になると思います。
 また食物アレルギーについては、管理指導が更新できるようになりましたが、ぜん息やアトピーについては毎年提出が必要です。年数が経ってくると、「学校のほうもわかってくださっているし、あらためて出さなくてもいいのではないか」と考える保護者も出てくるので、必要性を理解していただくのが大切です。

並木本会によくかかってくる電話では、今まで長い間関わり治療してきたのにいまさら病院で書いてもらわなければいけないのかという意見が多いですね。アレルゲンの食べ物を食べて、病院へ行って、さんざん辛いことを経験したのだから、こんなものを書くのはもうたくさんだ、親が一番知っているという意見です。

井上そのようなご意見はたくさんあります。例えばアトピーなので動物の飼育小屋に入らないようにとか、塩素がだめなのでプールのときにシャワーを十分に浴びさせてほしいとか、口頭で今までさんざん言っているのに、あらためて管理指導表を出さなくてはいけないのか、という意見は当然毎年あります。ほかの学校でも同様の意見があるということを聞きます。しかし症状は変わってきます。食物アレルギーでも、今まで食べていたものが食べられなくなることもありますし、よくなってくることももちろんあります。変化してくるということをわかっていただかないと困ります。本校でも、別の食物アレルギーとこちらが把握していた児童が実はピーナッツアレルギーもあって、給食の焼きそばに入っていたほんの少しのピーナッツバターに反応してしまったということがありました。保護者もそれは把握していませんでした。そのような例がありますので、やはり実際に受診して検査を受けることはとても大切だと思います。

並木本人が把握していたもの以外にまだアレルギーがあって、それが反応してあわてるということですね。

井上バナナなど、最近フルーツアレルギーがとても増えてきています。以前はキウイなど特定のフルーツだけだったのですが、リンゴなどもアレルゲンになったという話も聞くようになりました。花粉症の増加との関係があると思いますが。そのような例では、保護者もその食べ物が嫌いである例が時々あります。お母さんが食べないので買ってこない、という例も多く、給食で初めて食べて反応するケースがあるのです。やはり受診していただくということはとても大切です。

並木ほかには何かありませんか。

菅沼A君は多くの食物にアレルギーがあり、小学校の時はその食品すべて除去して給食が提供されていました。課題は医師の指示がないことでした。医師に受診してアレルギーの原因になっているものを知っておくことが大切という話をさせていただきました。受診した結果は食べられないと思っていた食べ物が食べられることがわかりました。

沢田アレルギー疾患は、例えばこれを修学旅行先でかかった病院に持っていくと、聞き取りも検査もせずにその生徒のアレルギーについてだいたいのことがわかるわけですよね。そうすると重篤な症状になった時に、医療者側が迅速に対応できるといった利点があるので出してほしいとお伝えします。
 問題点としては、教職員には理解しづらい内容ということがあげられます。どちらの管理指導表も保健体育科や担任に渡すのですが、アレルギー疾患用は先生方にはちょっとわかりづらいと思います。どちらかというと医療者側に見やすくできていると思います。学校で活用するには、体育の時はこう、家庭科はこうというように、学校内で注意することを具体的に書いてもらった方が良いと思います。
 また経済的な問題もあります。心臓病や糖尿病の生徒は管理指導表の記載にあまり文書料を取られないこともあるようですが、アレルギー疾患用は文書料を支払うことが多いようです。入学時等に提出していただいた管理指導表をコピーし保護者に渡し、それを持って受診し変更がないかどうか確認していただき、必要時は少し書き添えてもらうとか工夫して、なるべく負担にならないようにしています。医療機関にもよると思いますが、5000円くらい必要になるケースもあるようです。

並木初めて聞くご指摘ですが、確かにいわれてみればそうですね。アレルギーに関する管理指導表はどちらかというと専門的に濃い内容で、普通の先生方がご存じないような内容が書かれているのかもしれません。お医者さんにわかりやすいような内容になっているということですね。この1月の上旬に、全国に腎臓関係、心臓関係の生活管理指導表が出たのですが、そちらのほうは学校の先生もわかるような内容ですね。教師にはわかりにくいというご指摘は大変いいご意見だと思います。
 また生活管理指導表が診断書的な扱いなのか、あくまでも医師と学校を結ぶ連絡通知なのか、はっきりしていないというところはありますね。これはあとで確認を取っておきます。やはりお医者さんの世界では医師名で書く以上は法的な責任が問われますので、無料というわけにはいかないということでしょうね。またその料金をきちんと一定の基準で決められないのかといったら、決められないのですね。独占禁止法等の関係で全国一律というわけにはいかないようなんです。一方領収書を出すと補助金が出るところもあるようですね。制度的にやり方はいろいろあるということは聞いています。そういう方向へ持っていかないと解決しないかなという気はしますね。

井上文書料は最近は、だんだん安くなってきて、100円くらいで書いてくださる先生もいます。

並木アレルギーは本人の責任ではないですからね。料金がかからないようなシステムが必要だと思いますね。

井上検査料や受診料入れると1万円近くになってしまうこともあります。さらに入院して付加検査などをすると相当な金額がかかってきます。