[01] これまでの体験から |
[02]「学校でのアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」と学校生活管理指導表(アレルギー疾患用) |
[03] 学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の取り扱いと活用 |
[04] 今後の課題(1)―研修体制・保健指導― |
[05] 今後の課題(2)―エピペンの取り扱い― |
今後の課題(2)―エピペンの取り扱い―
並木このガイドラインが出て4年目に入ったのですけれども、そのことで問題が生じているようなことはないですか。だいぶいろいろなところで波紋が広がったりしたもので、皆さんもお気づきの点があったらお話いただきたいと思います。
井上昨年夏にアレルギー学会がありましたが、そこで研修した内容とガイドラインがまったく同じでした。4年前に出されたガイドラインですが、新しい情報が入っていて、素晴らしいと思います。
並木専門家に関わっていただきましたからね。
沢田エピペンについては、先生方の中には抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。ここにしっかり書いてあるのを読むと、それでやっぱり打たないということになってしまうと思います。しかも生徒に代わって注射する場合をどう判断するのか迷うようです。
並木会議の記録が残っているのですが、これを本当に学校でやらせるのかということを議論していまして、養護の先生はできないというんですね。文部科学省の専門官は、ここにこれを載せるに当たって、法的なことは当然関係省庁と協議しているはずです。またもしその是非が問われるようであれば、この学会を通じて擁護するともいっています。やるべきだし、むしろやらないで見過ごして、その子が死に至ったときは、そのほうが問題ではないかとも言っていました。
井上小学校は、むしろみんな「やるんだ」という意欲がありますね。毎年真剣に練習しています。小学校は、教科ごとに先生が変わることがなく、一緒にいる時間が長いですし、子どもが自分でできないという状況のほうが多いので、危機感を持っていますね。先生方が一番悩むところは、どの症状が出た時に打つのかということです。グレードでいうと「1」は「打たない」、「2」は「場合によっては打つ」、「3」は「打つ」ですが、例えば呼吸症状で、「咳が持続する」とありますが、どのくらいの状況が「持続する」状態なのかという判断がつきかねるというのです。養護教諭がいなければ自信がないといいます。
沢田でも関心がありますよね。
井上もちろんあります。校内研修は全員参加です。
沢田アレルギーといえば花粉症という軽いイメージも強くあるようなんです。
井上命に関わるという場面は見たことないのでしょうね。
沢田たぶんそんなことは起こらないと思っているかもしれません。
並木こんなことは俺たちの仕事じゃないよ、という感じなのですね。それはちょっとどうかなと思いますね。子どもを預かっている学校関係者としては寂しい話だなと思います。
井上でもAEDの訓練は参加するのですか。
沢田だからポイントは「針」なのかなと、針を刺すことに抵抗があるのではないかと思います。生徒自身で打つのが基本であり、教職員が打つのは万が一の時で、万が一のことが起こらないことを願っているのかもしれません。
並木養護教諭がいれば大丈夫と思っているのですかね。
沢田私が修学旅行へは同行しないから練習をしてくださいと言ったのですけれどもね。
並木その万が一の時にはやらなかったことのほうが問題になるということです。
沢田このガイドラインの記載を逆に取ると、「基本的には医者・本人が行う」というところばかり強調されてしまうのかもしれませんね。
並木これは関係省庁とのすり合わせは終わったと思っています。だから先生がやったからマイナスに捉えられるということはないのです。ガイドラインに記載されてあるとおりです。
井上アナフィラキシーは見る見る悪くなりますからあっという間に手遅れになってしまいます。エピペンの使用は重要ですね。
並木エピペンの管理はどうしているのですか。
沢田本人が携帯しています。
井上本校ではランドセルの中に入れています。
菅沼中学生もそうです。鞄の中です。野外に行く時はウエストポーチに入れていきます。
並木温度管理の必要はないんですか。
菅沼15℃〜30℃で保存することが望ましいとされています。野外で活動する時は事前に打ち合わせをして、活動場所が生徒と同じ教職員が対応することにしています。
井上エピペンは一人に1本しか処方されないので、家庭用と学校用に1本ずつ用意できないのです。保健室で預かって本人が忘れて帰り、万一自宅で何かあったらいけないので、常に本人が携行しなければいけないということになっています。
並木使用期限はあるのでしょうか。
菅沼有効期限は、20ヶ月です。
並木保険適用はどうなっているんですか。
井上最近保険適用になりました。
並木では、最後にこれだけは言っておきたいということはありませんか。それを持って終わりにしたいと思います。
井上このガイドラインが本棚にしまわれたままにならないようにしたいと思います。常に誰でも見られるように、養護教諭が異動しても次の方に引き継がれるようにしておきたいと思います。そしてこのガイドラインを基に一人ひとりの支援プランを作成し、養護教諭以外の教職員でも対応できるシステムを作っていきたいと考えています。
菅沼「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」を活用し、アレルギー疾患の子どもが安心して学校生活が送れるようにしたいと思います。
沢田ガイドラインのダイジェスト版が欲しいです。これだと厚くてコピーをしようと思うと大変なので、いくつか大事なところを抜いてハウツー物を作ることになるので、パンフレット版のガイドラインがあるといいと思います。ぱっと見てすぐに対応できる資料があると良いですね。
並木ありがとうございました。本日はご出席いただいた皆さんからいろいろなご意見をいただきました。この座談会がアレルギー疾患のある子どもたちの対応で悩んでおられる方々のお役に立てば幸いです。