4.いじめ、二次障害の問題
思春期は子どもから大人に向けて急速に心身が変化・成長する時期である。子ども同士の関係やコミュニケーションも、小学校低学年までとは質的に異なったものへと変化する。そのような仲間関係やコミュニケーション作りに乗れない子どもの中には、孤立を深める子も出てくる。元々コミュニケーションが苦手な自閉スペクトラムなどの発達障害の子など、他の子とは異質と見られやすい子ではそのようなリスクが高い。
また思春期は二次性徴の出現、性ホルモンの急速な増加に伴って攻撃性が現れやすい時期でもある。一方これをコントロールし、行動を統制する大脳の前頭前野は、情動・感情の発現そのものに関わる部位に比べて発達が遅く、その完成は20代前半までかかると言われている。自動車の運転に例えるなら、ハンドルやブレーキ操作が未熟なままアクセル全開になりやすいのが思春期の特徴と言ってよいだろう。このため攻撃性が制御しにくく、いじめを含めて様々な攻撃的な言動に出やすいのがこの時期である。実際、思春期が始まる10代の初め(小6から中2くらい)は、一般にいじめが最も増える時期でもある。いじめの被害はどのような子も受ける可能性はあるが、不器用な子、運動の苦手な子、孤立がちな子、異質と見られやすい子はターゲットとなりやすい。
そのような子の中にいわゆる発達障害の子が入る可能性は高い。つまり発達障害の子は、小学校高学年以後、孤立やいじめの被害にあう可能性が高いということである。その結果、それまでの「発達障害」そのものに加えて、不安症やうつ病などの精神疾患が合併することになり、学校への適応がますます困難となりやすくなる。これを「二次障害」と呼ぶ(図3の右下)。これが不登校(高校以後は退学)や長年の引きこもり等に繋がる例の少なくないことは学校関係者なら周知のことと思われる。